現場とのギャップに気づけなかった、情報収集の失敗談
新しい世界への第一歩、情報収集の落とし穴
新しい分野への挑戦を考えるとき、最初に何から始めるべきでしょうか。多くの方が「情報収集」と答えるのではないでしょうか。私もそうでした。それまで全く経験のなかった分野へのキャリアチェンジを決意した際、まずは徹底的に情報を集めようと考えたのです。インターネット上の記事、ブログ、SNS、書籍などを片っ端から読み漁りました。しかし、その情報収集こそが、後に私が大きなギャップに苦しむ原因となったのです。今回は、私が情報収集で失敗し、現場の現実とのズレに直面した経験談と、そこから学んだ教訓についてお話しいたします。
煌めく情報に目を奪われ、現場を見誤った経緯
私が挑戦しようと考えたのは、当時の仕事とは全く異なる、クリエイティブな分野でした。華やかで自由な働き方ができるというイメージがあり、インターネット上にはその分野で成功を収めた人たちの眩しい情報が溢れていました。「好きなことで生きていく」「場所を選ばずに働ける」「年収〇千万円も夢じゃない」といった言葉が踊り、キラキラした成果物やライフスタイルを紹介するブログやSNS投稿を、私は鵜呑みにしてしまったのです。
書籍やオンライン教材からは、技術的な入門知識や成功するためのノウハウを学びました。それらの情報も、比較的順調に進むケースや理想的な展開を中心に書かれていることが多かったように思います。
私は集めた情報から、新しい分野での仕事は刺激的で、努力すればすぐに成果が出て、理想的な働き方が実現できると確信に近いイメージを持っていました。そして、そのイメージだけを頼りに、具体的な準備を進め、いざ現場に飛び込んでみたのです。
理想と現実の間に立ちすくんだ日々
現場に飛び込んでみて、すぐに理想と現実の大きなギャップに直面しました。インターネットで見たような華やかな仕事ばかりではなく、地道で泥臭い作業が多いこと。納期に追われるプレッシャーが想像以上に大きいこと。技術的なトラブルは日常茶飯事で、それを解決するためには情報収集だけでは得られない経験や応用力が必要なこと。そして、クライアントとのコミュニケーションの難しさや、契約、経理といったビジネス面の処理に予想外の時間が取られることなど、事前に得ていた情報にはほとんど書かれていない現実が次々と押し寄せてきたのです。
特に辛かったのは、イメージとの違いからくるモチベーションの低下でした。「こんなはずではなかった」という失望感と、それまで費やした時間や労力が無駄になったかのような焦燥感に苛まれました。思うように成果が出せず、自己肯定感が揺らぐ中で、「自分には向いていなかったのではないか」と、挑戦自体を諦めそうになった時期もありました。
失敗の要因分析:なぜ現場が見えなかったのか
この失敗の最大の要因は、私の「情報収集のやり方」そのものにあったと分析しています。
- 情報源の偏り: 私は主にインターネット上の「発信されている情報」に依存していました。これらの情報は、発信者の成功体験やポジティブな側面を強調する傾向があります。一方、失敗談、苦労話、地味な日常業務といった、必ずしも人目を引かない情報は相対的に少なくなります。
- 一次情報へのアクセス不足: 実際にその分野で働いている人の「生の声」や、現場で実際に体験する機会(インターン、副業など)を通じた情報収集を怠っていました。机上の空論や理想論ではなく、現実的な課題や困難を知る機会を持たなかったのです。
- 情報の鵜呑みと批判的思考の欠如: 集めた情報をそのまま受け入れ、「きっとこうなのだろう」と楽観的に捉えすぎていました。「これは本当なのか」「別の側面はないのか」といった批判的な視点が決定的に不足していました。
- ネガティブな情報への無意識の忌避: 理想を追い求めるあまり、無意識のうちにその分野の負の側面やリスクに関する情報を避け、ポジティブな情報ばかりを選好していた可能性があります。
学びと、現実を見据えた次のステップ
この失敗から得た最も重要な学びは、「情報収集は多角的に行い、特に一次情報やネガティブな側面にも目を向ける必要がある」ということです。キラキラした情報だけでなく、地道な部分、大変な部分を知ることで、より現実的な目標設定と準備ができるようになります。
この学びを活かすために、私は情報収集の方法を大きく変えました。
- 現場で働く人に直接話を聞く: カジュアル面談や業界の交流会に積極的に参加し、年次の異なる複数の人から話を聞くようにしました。大変だったこと、挫折経験、実際の業務内容など、インターネットでは知り得ないリアルな声を聞くことができました。
- 体験の機会を作る: 可能であれば、短期間でもその分野に関連する業務を体験できる機会を探しました。ボランティアや副業として関わることで、書籍やネット情報だけでは得られない肌感覚を掴むことができました。
- 情報の「裏側」を見る: 発信されている情報だけでなく、その背後にある努力や苦労、ビジネスとしての厳しさなどにも想像力を働かせるようになりました。また、異なる視点からの意見(批判的な記事や失敗談など)も意図的に探すようにしました。
- 小さなステップで試す: 大規模なキャリアチェンジの前に、まずは小さく始めてみることを意識しました。副業で試したり、関連コミュニティで活動してみたりと、リスクを抑えながら現実を知るステップを踏みました。
これらの行動を通じて、私は新しい分野の全体像をより正確に把握できるようになり、理想と現実のギャップを理解した上で、次の挑戦への具体的な計画を立て直すことができました。
失敗から得た、次の一歩を踏み出す勇気
情報収集の失敗は、私にとって立ち止まらざるを得ない経験でした。しかし、この失敗があったからこそ、情報の扱い方、現実との向き合い方について深く学ぶことができました。失敗を恐れるあまり情報収集だけに時間を費やしてしまうこともありますが、重要なのは「どんな情報」を「どのように集めるか」そして「どう解釈するか」です。
新しい分野への挑戦は、未知の領域に足を踏み入れることです。そこには必ず、想像とは異なる現実や困難が存在します。完璧な情報を集めることは不可能であり、ある程度のギャップは受け入れる必要があります。しかし、多角的な情報収集を通じて、そのギャップを最小限に抑え、心の準備をしておくことは十分に可能です。
もしあなたが今、新しい挑戦を前に情報収集をしている最中であれば、インターネットの情報だけに頼らず、現場の声を聞き、可能であれば少しでも体験する機会を探してみてください。そして、良い面だけでなく、大変な面やリスクについても目を向けてみてください。
私の失敗談が、あなたが現実を見据えつつ、前向きに次の一歩を踏み出すための、ささやかなヒントとなれば幸いです。失敗は、避けられないものとしてではなく、学びと成長のための貴重な機会として捉え、共に次の創造へ向かいましょう。